ミャンマーの深夜バス


ミャンマーに来てから、都市間の移動は、全て深夜バスを利用した。バスや列車を利用するメリットは、コストを抑えられることもあるけれど、本当は、飛行機のようにひとっ飛びではなく、点と点を線で結ぶように移動することで、見知らぬ土地の国の広さや、風景の移り変わりを直接感じられる点が大きい。

ところが基本的に次の目的地の宿を予約していないことが多い旅となると(これは現地に着いてから自分の目で見てコストパフォーマンスの最も良い宿を見つけたいため)、どうしても「太陽が十分に出ているうちに到着したい」となるため、早朝~午前中に着く深夜バスを利用することが多くなる。

今回利用したミャンマーの深夜バスは、どれも目的地に着くのが異常に早い時間帯だった。幸か不幸か、ほとんど遅れることが無かったので、朝(というか夜中)の3時や4時に、真っ暗なバスターミナルに着いてしまう。バスはしっかりと乗客名簿を管理してくれているので、眠っていても必ずたたき起こされる。親切な現地の人が隣に座っていると、乗った時点で行先を聞かれて、着いた時には教えてくれるので、寝過ごしてしまう心配はなかった。

眠い目をこすりながらボ~とした頭でバスを降りると、いきなり客引きのタクシーやサイカー(自転車タクシー) の男たちから、ドワッと囲まれる。そして勢いよく行先を尋ねられ、「宿の予約はあるか?」「イイ宿知ってるぞ」「〇〇チャットで連れてってやる」とまくし立てられる。

最初はこの勢いに圧倒され、かつ真っ暗な中に取り残されるのではという不安もあって、値切る間もなく言い値で宿まで行ってしまった。当然ながら後から聞くと、その距離では、うまく交渉すれば2/3~1/2の料金で来られることがわかり、「しょうがない、安心を買ったんだ…」と自分を慰めていた。

ところが慣れてきて少し落ち着いて周りを見渡せるようになると、深夜と言えどもバスターミナルの周辺にはポツポツと営業しているカフェ(といえるオシャレな代物ではないけれど)があることが分かってきた。「最悪、日が昇るまでそこで時間をつぶそう」と覚悟を決めると、値段交渉する勇気も湧いてくる。頑張って交渉してみると、そこは相手も「ここから宿まではかなり遠いんだよ!」と粘ってくるけれど、少しずつ料金は下がってくることがわかった。

インレー湖に向かう手前の町のニャウンシェに朝4時に着いた時、客引きのタクシーに値段を聞くと「1人8000チャット」と言われたので「高い!」と言うと、「少し待てば次のバスがやって来て外国人が降りることは多いから、そうすれば宿までシェアすればいいよ」とあっさりと言われた。
さらに「ここでは寒いからカフェでお茶飲みながら待ってもいいし、俺のタクシーに乗って待ってもいいよ」と言われて、逆に面喰ってしまった。
案の定、15分くらいで次のバスがやって来て、結局ベルギー人のカップルとシェアして、宿まで半額以下で行くことができた。

ちなみに、他人とシェアした場合は、よっぼど離れていない限りは、それぞれの希望の宿を同じ金額で周ってくれる。もしも宿が満室だったり、希望の値段でチェックインできない場合は、第二希望の宿にも変わらない料金で連れて行ってくれたりする。
バガンでは、第三希望まで考えていた宿にも希望の値段のシングルに泊まれなくて、途方に暮れていると、サイカーのドライバーが知っている宿に連れて行ってくれて、そこに予算内で泊まることができた。

ミャンマーの深夜バスがこんな調子なのは、外国人旅行客を、真夜中や超早朝の交渉力と判断力が
極めて弱い不利な状況に置くことで、少しでも多くのお金を搾り取ろう、という魂胆なんじゃないか、とひどく悪い見方で勘ぐってしまった。だって、PM7:00発のバスをせめて9:00発に修正するだけで、少なくとも、AM3:00到着を5:00到着にすることができるのだから。

ところが、後で旅で知り合った人から聞いた話では、一説によると、ミャンマーの道路事情が今よりももっと悪かった頃の時間で今でもそのまま運用されているため、こんなに早く着いてしまうらしいのだ。つまり、昔は同じ時間に出発しても、今よりも2~3時間遅い「ちょうどよい」時間に到着していたらしい。これが本当の事情かどうかはわからないけれど、なんだかあまりに間の抜けた理由なので、「憎めない国だな」と思ってしまった。

今大きな過渡期にあり、外国人旅行客がどんどん増え続けているこの国では、早晩このバスの仕組みも改善されるのではないかと思う。そう考えると、こんな体験ができる今は、貴重な時なのかもしれない。