“Make Personality”


ヤムさんの実家を訪れた時はちょうどお祭りの時期だった。
村の人たちが広場のような所に集まって、みんなで作ったご飯を一緒に食べたり、女性たちの中には伝統的な民族衣装で着飾っている人が沢山いた。わたしもヤムさんのお母さんの衣装を借りて着せてもらい、音楽が流れ出して踊りの時間がくると、見よう見真似で一緒になって踊りの輪に加わった。村の人たちは「日本からのゲスト!」と言って、笑顔で温かく迎えてくれた。

踊りの時間がひと段落すると、お祭りの輪から離れて、ヤムさんの家の屋上で、二人でしっぽりとロキシーを飲みながら、ぽつぽつと話しをした。
こんな風にわたしを家に招いてくれた気さくでフレンドリーなヤムさんだけれど、「少し前までは、人見知りが激しくて、他人と話すのが苦手だった」と少し恥ずかしそうに話してくれたのを聞いた時はとても意外だった。
今回わたしを誘ってくれたのも、一人旅のうえ、カトマンズの宿で他の旅人と特に交わらず、夜はいつもパソコンをいじっていたわたしに、彼は以前の自分を重ねて同情してくれたのかもしれない。

大学生の彼は、将来について、とても悩んでいた。
打ち明けてくれた話を聞いていると、「まだ若い彼の前には様々な選択肢が広がっているんだなぁ…」と、正直うらやましく思ってしまったけれど、確かに色んな可能性がある分、迷いは深いのかもしれない。

彼は何度も「make personality」という言葉を使った。それはおそらく「自分を鍛練したい」というような意味合いだったのだと思う。
その思いを聞いていると、わたしがこの旅を決心した時の動機と、根底の部分で通じるものがあるような気がして、彼を応援してあげたい、と思った。彼は両親に対しても、とても責任感を持っていて「できるだけ早く楽な生活をさせてあげるために、自分が稼げるようになりたい」と語っていた。
その時は、今のところ家族に(金銭的な)責任を感じることなく、心配してくれる家族を置いて、自由に旅している自分の身と大きな隔たりを感じ、ちょっと申し訳ないような複雑な気持ちになった。

「今は特定の彼女は欲しくない」と言っていたヤムさん。まだ20代前半だけれども、親戚や周囲から結婚のプレッシャーが結構あるらしい。わたしのことを誤解されないように両親にはちゃんと説明してくれたヤムさんだったけれど、実際のところは、村のお祭りに女性を同伴すると、それなりに”公認の仲”と受け取られ、周りも”独り者”として見なくなるらしい。彼はそのことをサラッと語っていたけれども、それで周囲からの結婚プレッシャーが少しでも減ってくれれば、今の彼にとっては本望のようだった。

彼の招きに甘えてノコノコと実家までついて来てしまい、素晴らしい景色とご馳走をいただくばかりで申し訳なく感じていたけれども、その話を聞いた時は、「少しは彼の役に立てたのかな」と思い、苦笑しながらも安心した。