バオバブ街道を行く


マダガスカルで有名なバオバブ街道。サンライズとサンセットの2回見に行くのが定番。
そこをわたしは4回も訪れた。

一度めはレンタサイクルで。
確かネットで「レンタサイクルでも2時間くらいで行ける」という情報を見かけて、軽い気持ちでチャレンジした。途中までは舗装道路で、気持ちよく風をあびヤシの木を見ながら走っていた。ところが最後に道を曲がった途端、急に道は悪路に変わった。悪路というか、まるで「モーグルのコースですか??」と言いたくなるようなデコボコっぷり。そこを舌をかみそうになりながらも必死にこいだ。

更に行く手を阻むのは数日前の大雨でできたというまるで池のような水たまり。もちろん自転車を降りて、サンダルを脱ぎ、現地の人と一緒になって裸足で越えた。宿のレセプションの人が「自転車はお勧めしないよ」と言っていたのを今さらながら思い出し、わずかに後悔しながら…。

3時間近くかかって陽が沈む前にようやく着いたはいいけれど、陽が傾き始めた頃には遠くで雷が鳴り出した。あの悪路を雨の中で乗り切る気力と自信はもはや無く、悔しい思いで唇をかみながらも帰路につく。そしてその直後、自転車の前タイヤがパンクした…。まさに踏んだり蹴ったり。愕然。

自転車を押してなんとかたどり着いた途中の村でパンクを見せて助けを求めると、親切な人が村のいくつかの家を周って修理できる人を探してくれた。けれども、あいにくの不在。陽の傾きと共にどんどん募る焦りの中で、突然浮上した解決策。バイクの後ろにロープで自転車をくくりつけ、更にわたしも一緒に乗せて町まで戻る

「本気かよー!!」と最初は疑ったけれど、村の男たち何人かで必死になって自転車をくくりつけてくれるのを、ただただ見守るしかないわたし。どこからかやってきたバイクの運転手は、迷彩服を着て銃を持っていた。けれど、どうやら警察官ではないらしい。軍人? レインジャー?

準備ができて、わたしもバイクにまたがり走り出すと、すぐにエンスト、走り出してはまたエンストの繰り返し。行きの道で裸足になってバシャバシャ渡った水たまりは、もちろんこの時もバイクを降りて、ふくらはぎまでドロドロになりながら裸足で越えた。この悪路を半分くらい来たところで、トラクターのような車に追い抜かされた。
すると銃を持ったわたしのドライバーが「あれを止めて乗せてもらえ!」と突然叫ぶ。慌ててバイクを飛び下り、走ってトラクターを追うわたし。
人生初のヒッチハイクが、まさかバオバブ街道(からのびる悪路)で、しかもトラクターになろうとは。結局、前半のバイクのドライバーにも、後半のトラクターのドライバーにも十分なお礼をして、なんとか町まで戻ることができた。

二度め・三度めはランドクルーザーで。
この時は、キリンディー保護区にキツネザルを見に行くツアーの途中にバオバブ街道で止まってもらった。
ランクルだと自分の手足は全く汚れることもなく、多少(ではなく、かなり)の揺れさえ我慢すれば、絶景ポイントまで連れて行ってくれる。そこで、バオバブ並木の向こうの空を桃色に染めて昇る朝陽を優雅に眺めた。有名な”Baobab amour(愛し合うバオバブの木)”はバオバブ街道の奥の奥で、とても歩いて行ける距離では無かったので、ランクルで連れて行ってもらったのは正解だった。

これで満足すれば良かったものの、まだサンセットを見ていないことがずっと心残りで、最後にバイクをチャーターしてもう一度トライしてしまった。

四度めはバイクで。のはずたったのに…
待ち合わせ場所にやって来たのはどう見てもスクーター。募る不安。不安は見事に的中し、行きも帰りも例のモーグル・ロードでエンストを繰り返し、例の池が現れる度にわたしはスクーターから降りてバシャバシャと裸足で渡るハメになった。それでも最高のサンセットをしっかりと目に焼きつけて、思う存分写真を撮れたから良かったけれど。

この日サンセットを見に来た旅行者の中に、日本からのツアー・グループがいた。女一人旅で、ドロドロのスクーターをチャーターして来たわたしに彼らはとても驚き、同情し、日本語を話せる専属ガイド付きの彼らと一緒にベスト・ビュー・ポイントへ行こうと誘ってくれた。別れ際には「すごいねー! この先も頑張ってね!」と激励された。

お金を節約して(ケチって)、こんなに泥だらけになってスクーターで来たことを後悔しているわたしでも、他人から見たらたくましい女に見えるのかもしれないなぁ。ガイド付きで悠々と夕陽を眺め、ランクルでビューンと町まで帰って行く彼らを心底うらやましく思っているわたしなのに。

彼らに見送られて颯爽とスクーターの後ろにまたがったはいいけれど、彼らのランクルに追い越された後は、予想通り何度もエンストを繰り返した。ようやく舗装道路に出てからは、夜風を切って気持ちよく走れるかと思いきや、猛スピードを出すスクーターのおかげで羽虫が何度も頬や額に激突。忘れられない夜になった。